建物が沈下したら
家を新築して、二年。気が付くとドアの閉まりが悪い、壁にひび割れがある、床に丸いものを置くと勝手に転がって行く。。。家が沈下しているのか?
住宅販売会社に点検を依頼した。
建物の調査
まずは新築時の設計図、地盤調査データを確認し、沈下の可能性があるか、どうかを再確認します。担当者は青ざめているでしょう。沈下して修正工事を行うには少なくとも数百万はかかります。
次に現地に赴き、不具合状況の確認と建物の測定をします。建物の測定は高さと傾きの測定を行います。
高さの測定は建物の外周部で同じ高さの部分の測定をします。建物の内部は測定しません。高さの測定にはレベル測定器と言う望遠鏡が付いた機器を使いますが、壁がある為、建物の内部まで見渡せなく、また、建物の外部と同じ高さのポイントが無いからです。
建物の傾きの測定は下げ振りと言う道具を使います。錘の付いた糸を垂らし、上と下との寸法を計り、傾きを測定します。これは建物外壁の角部分で行います。
建物の測定終了後はその場では結論は出さずに「測定結果を分析し、後日、報告します。」と言うでしょう。
分析するほどの内容ではありませんが。
調査結果の報告
会社に戻った担当者は調査結果をまとめます。一番高い点を基準に各位置がどの程度下がっているか、沈下による傾斜はどうなっているかを図面に落としこみます。
次にこの調査結果を元に沈下が起きているのか、修繕工事はどうするかについての会議をします。沈下している場合は修正工事に数百万円はかかるので、出来れは、「多少の沈下はあるが問題ない」と言う結論を出したいでしょう。
そして、依頼者に結果を報告します。「問題ない」との報告をする場合は「何故、問題ないのか?」と言う説明が必要になりますが、日本建築学会の基準を持ち出し、許容値以内だから問題ないとの説明をします。
この基準には最大沈下量、相対沈下量、沈下による傾斜の角度が示されています。この中で一番重要なのは傾斜の角度ですが、3/1000となっています。つまり、1m先では3mmの沈下、5m先では1.5cmの沈下まで許容されると言う事です。
しかし、このレベルの沈下が起きたら、どうなるでしょう。幅1mのドアを考えた場合、扉は変形しませんが、ドア枠は3mm歪む事になります。元々、扉に3mmもの隙間はありません。つまり、開かなくなる、閉まらなくなります。
また、沈下は測定出来ていない建物中央部で最も大きくなるのです。実際はもっと被害が大きいのでしょう。
その後
住宅販売会社は「沈下は許容量以下です。問題ありません。」と言って、ドアの調整などのみをして、帰っていくでしょう。
そして、2年後、また、ドアの閉まらなくなってきた。今度は外から見て、明らかに傾いている。。。
沈下と言うの除々に進行していくものなのです。木造住宅でれば、沈下が収まるのに5〜10年程度はかかります。